物流業界の問題点
2018年4月1日のクロネコDM便約款変更、その背景には物流業界の人手不足と長時間労働の是正があります。
物流業界でいう価格(送料)は、荷物の形状・重量・物量、さらに距離と配達スピードが加味されて決まりますが、中でも一番のポイントは物量でした。これはヤマト運輸に限ったことではありませんが、荷物(仕事)欲しさから、物量が多ければ多いほどボリュームディスカウントが利くというのが物流業界の常識でした。
さらに、翌日配達や時間指定など、低価格かつ高品質なサービスを追求したヤマト運輸ですが、これまではクライアントの要望ならばコストを度外視してでも応えるというヤマト運輸ならではの側面もありました。
しかし、その結果、従業員やドライバーは長時間勤務を強いられ、早期離職者も後を絶たないことから、さらなる人手不足を生むという悪循環に陥っていました。
その反省からヤマト運輸は、ボリュームディスカウントで自らの首を絞めるのではなく、コストに見合ったサービスを提供し、従業員の労働環境や長時間勤務を是正するという方向にシフトしてきているのです。
ヤマト運輸の変化
たとえば、今年の年末年始の配達ですが、通常なら出荷日から4日間程度で配達完了するクロネコDM便が、この年末年始に限っては配達日数に10日間ほど要するとの知らせがヤマト運輸よりありました。
例年この時期は多くの従業員が休みを希望するものの、クロネコDM便の売りでもある「365日、4日間で配達」を実行するためには、従業員を希望通り休ませるわけにはいかないというジレンマがありました。そこで、昨年などは、年末年始の一定期間についてのみクロネコDM便の単価を引き上げることで、DM便の物量そのものを制御しようと試みました。
さらに、今回ヤマト運輸は、今年の年末年始については思い切って従業員の多くを休ませるという決断をしたのです。そのため、特に人手が不足する12月29日(土)~新年1月6日(日)まではDMの処理(地域区分)に時間を要するだけでなく、地方の配達を担当するヤマトメイトの多くも休ませることから、配達日数が通常の倍以上かかるというのです。これはある意味、クロネコDM便のサービスを犠牲にしてでも従業員の労働環境改善を優先しようといことであり、過去のヤマト運輸では考えらえない対応です。
まとめ
今回のクロネコDM便約款の変更ですが、おそらくヤマト運輸はこれまでの物流業界の常識と決別し、「DM便という低価格のサービスである以上配送の品質は落ちる。販売商品など確実に届けたいものは、(高価格=高品質の)宅急便やネコポスなどを利用してほしい。そして今後は物量ではなく、サービスや品質に見合ったコストを請求する」ということを堂々と表明したのでしょう。
またその背景には、物流業界の人手不足問題がかなり深刻化していること、さらには、今後も引き続き約款の変更や料金の引き上げがあることを利用者は覚悟しなければならないでしょう。